サッカーへの熱狂は、過酷な現実から心を守る不屈の希望」 イラク復興の歴史と、映画が描くトラウマと救済の真実とは?
8月7日(金)に全国公開が控えた映画『#バグダッド・メッシ 片足のサッカー少年』。東京外国語大学プロメテウス・ホールにて7月22日(水)、本作の特別試写会が開催されました。
映画上映後には、駐日イラク共和国大使館の参事官、文化担当官であるアハマド・アルアザウィ(Ahmad Al Azzawi)参事官による映画解説を実施。過酷な紛争下を生き抜いた同胞たちのリアルな心理描写、イラクと日本の意外な歴史的つながり、そして学生たちとの熱い質疑応答が行われました。
片足を失った少年の「妄想」は、心が崩壊を防ぐための防御壁
外交官として、そしてイラクの激動期を現地で生きてきた一人として登壇したアルアザウィ参事官。映画の主人公ハムディが、足を失ってもなお「足はまた生えてくる」「自分はプロサッカー選手になる」と信じ続ける姿について、心理学的・社会的な視点からその核心を解説。
「過酷なトラウマに直面したとき、人間の脳は記憶や感情を一度フリーズさせ、精神の崩壊を防ぐための“ダメージコントロール(防御壁)”を作ります。ハムディが抱く夢や幻想は、単なる幼い妄想ではなく、絶望的な現実から自分の命と心を守るために不可欠な『生きるための戦略』だったのです」と語り、本作が極限状態における人間の心理をいかにリアルに捉えているかを指摘しました。
絶望の中で人々を支えた「サッカーという逃避行」
劇中、サッカーの試合やサッカー選手に熱中する父子の姿が描かれます。アルアザウィ参事官は、この描写こそが当時のイラク人たちの日常であったと振り返り、
「明日の生活や情勢への不安が渦巻く中、バルセロナの試合展開やスコアを想像することだけが、過酷な現実から逃れられる唯一の解放区でした。サッカーは彼らにとって単なる娯楽ではなく、明日を生き抜くための“希望の光”そのものだった のです」と語りました🇮🇶
2009年 外務省爆破事件と「日本との強い絆」
また、映画の舞台と同じ2009年にバグダッドの外務省周辺で起きた連続爆弾テロについても言及し、ご自身も現場近くにいた悲惨な体験をお話しくださいました。
「このテロにより、最終的に多くの尊い命が失われました。しかし、私が勤務していた外務省の建物や周辺施設は、1980年代に日本企業によって極めて高い建築基準のもとで建設されたものでした。もしあの強固な日本の建築技術がなければ、被害はさらに甚大なものになっていたでしょう。イラクの復興と歴史の裏には、常に日本との深い繋がりが存在 しています」と、知られざる日本との結びつきを感謝とともに教えてくれました。
学生との質疑応答コーナー
トークの後半では、会場に集まった東京外国語大学の学生とのインタラクティブな質疑応答が行われました。
【学生からの質問】 イラクの現状や文化について、私たちはこの映画を通して何を学び、考えるべきでしょうか?また、イラクへの理解をさらに深めるために、おすすめの映画や作品があれば教えてください。
【アルアザウィ参事官の回答】 素晴らしい質問に感謝を示しつつ、独裁政治下の社会構造や国民の心理を学ぶ一作として、日本で絶賛公開中の映画『大統領のケーキ』を推薦してくれました。
「サダム・フセイン政権下など、独裁者たちは自らの権力を維持するために個人崇拝を強制しました。例えば大統領の誕生日には、国民に巨大なケーキを作らせ、その大きさが忠誠心の証とされるような不条理な社会構造が存在したのです。政治的な抑圧がどのように人々の精神や生活を支配していくのかを知るうえで、非常に深い教訓を与えてくれる作品です」と語り、映画を通じて世界の現実に目を向け、自ら学び続けることの大切さを学生たちへ訴えかけました。
映画『バグダッド・メッシ 片足のサッカー少年』は8/7(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開⚽️
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